十和田の伝統工芸品に「南部裂織」があります。南部裂織とは、地機(じばた)に綿 の糸をはり、古布を裂いて横糸にして 織る、温もりのある織物です。
今回のまちねたは、道の駅とわだ とわだぴあに併設されている「南部裂織の里 匠工房」をご紹介します。
古民家風の建物が目を引く「南部裂織の里 匠工房」では、南部裂き織り保存会のみなさんが裂織の普及と伝承のため、日々活動されています。
地機は古いものでは100年くらい前の、安政三年の時代に使われていた機があります。
真っ黒だったものを丁寧に洗い、今も現役です。
小林先生いわく、使ってこそ価値がある、展示してしまうと使われないからとおっしゃっていました。
その隣には、ドラマ「あまちゃん」のセットに使用されていた機もあります。
鮮やかな糸がたくさん。県外からも糸を買いにお客さんがくるそうです。
南部裂き織り保存会は、1975年7月7日七夕(棚機)の日、故・菅野暎子先生によって、失われつつあった南部裂織の普及と伝承のため『暮らしに創る喜びを、手仕事の温もりをいつまでも』をモットーに設立されました。
現在では教室の生徒は50人、会員は200人ほどおり、家庭や家族のため、先祖の偉業を伝えるため、また、師に対する感謝の心を持ちながら活動されています。
管野先生の写真のそばにはいつも生徒さんからのお花が美しく活けられています。
菅野先生が裂織を後世に残そうと決められた当時は、裂織を織られる方が十和田湖町に2人しかおらず、地機を残し昔の手仕事を伝えるために様々な苦労があったそうです。
菅野先生は南部裂織を復活させた功労を高く評価され、「青森県伝統工芸士」に認定、「伝統工芸功労褒章」をはじめ、多くの受章を受けました。
菅野先生がおられた裂織のざぶとん。先生ならではの優しい色合い。
裂織は自給自足の生活から生まれたもので、糸を張り、そこに古布を織り込んで、自分の体の手足をエネルギーにして織っていきます。
菅野先生は赤色が好きで、昔の真っ黒でススだらけの家の中に、綺麗な色をという心遣いもあったそう。
他にも裂織の赤色には意味があり、炬燵がけは火事がおきないように赤い縁取りで火の神様に守ってもらう、前掛けの赤は女性の身に悪魔が入らないように、と織られているそうです。
菅野先生の教えに、「タテ糸はまっすぐいきなさい、ヨコ糸は布によって色が変わる。人生を表していて皆違う、全て違うものができる」という言葉があり、裂織は競うものではないため一つだけを選んで素敵とは言わず、皆一等賞だとおっしゃっていたそうです。
小林先生に、裂織の魅力をうかがったところ、「布の人生を考え、どういう人が使ったのか想いを馳せるのも楽しみだ」とお話しされていました。
物を無駄にしない、昔の人の教えでは「小豆三粒詰める布を捨てるな」といわれたそうです。
裂織には、昔の人の暮らしの工夫や知恵、いろんな思いが込められていると感じました。
創立30周年記念南部裂織フェスタin十和田では、炬燵掛けを300枚展示されました。
2007年には、前会長の菅野暎子さんをしのび、帯千本展もおこなわれました。
匠工房では笑顔が絶えず、会員の方たちは「和やかな場所で、ここに来るのが楽しい」と活動されています。
小林先生は、「十和田の若い人へ、裂織の魅力を伝えて後世に残していきたい。十和田に生まれたら『南部裂織』という言葉を覚えて出て欲しい。また、観光資源として産業、教育、観光など、十和田市のために貢献したい。」とお話してくださいました。
ぬくもりある裂織と、あたたかい心に触れ合える匠工房では、初心者の方も裂織体験ができます。ぜひ立ち寄って、自分だけのオリジナルの裂織を織ってみませんか。
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『匠工房「南部裂織の里」』
HPはこちらhttp://www.sakiori.jp
■〒034-0051青森県十和田市大字伝法寺字平窪37番21号 道の駅 とわだぴあ内
■営業時間 10:00〜16:00
■定休日 月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)
■TEL 0176-20-8700
■駐車場 あり
■美術館から車で15分
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お忙しい中、快く取材にご協力いただきましてありがとうございました。
【取材】土井太陽+新岡恵【写真】土井太陽+南部裂織保存会からの提供【文章】新岡恵