シャッター街のシャッター外、中央商店街(中央デパート)と十和田市現代美術館を拠点に、双方を行ったり来たりしながら、お店の方達と話をして手に入れた廃材(High-財)を組んで山車小屋台を制作。十和田滞在から約3週間を迎えるシャッターガイこと坂口直也さんに話を聞きました。
■ シャッターガイはどのぐらい前にはじまったのですか。
坂口 秋田県大館市で開催されているアートプロジェクト「ゼロダテ」の第一回開催時からです。具体的に何をやるかは大館に行ってから考えました。
もともと自分を媒体にする表現方法を考えていました。つまり自分を含めて作品化しちゃうということです。また同時に、その土地のものを使って作品を作りたかったんです。これが僕のインスタレーションですね。
シャッターガイをやっていること、廃材を集めること自体は“口実”、そこが重要なんです。
特に外から来た僕は、何もなければ商店街の皆さんとはなかなか話しづらい。シャッターガイをやっている“口実”があることで繋がれる話題ができる。山車小屋台を押しながら、ご挨拶すると打ち解けてもらえるんです。一般のお客さんの入れないお店の奥まで案内してもらえることもあります。
■ 一般のお客さんはもちろん、市内在住者でもめったにおじゃますることのできない、とあるお店の2階の居住空間まで案内してもらっていましたね。
坂口 そうですね。一階の店内とまた違う強烈なこだわりが垣間見えて、もっとお店の方と話をしたいと思いました。
十和田市には現代美術館があり、商店街のみなさんもアーティストが街に出没する状態に慣れていらっしゃるようです。これは、今年7回目を迎えたゼロダテも同じことがいえるかもしれません。
プロジェクトがはじまる前、十和田でのリサーチでは、立場を明かさずに街を散策させてもらいました。松本茶舗の店主柳太郎さんのプレゼンテーションに感動して、自然とこれからこの街で活動することを話せたんです。街なかのアート作品展示に参加していて、一般のお客さんやアート関係者の皆さんもたくさん訪れている、なるほどと思いました。
開館から5年を迎え、アートセンターとしての役割や機能を持った現代美術館が、これまで街のみなさんと活動してきた歴史や軌跡があって、商店街全体でアートに対する理解がある。そして何人かのキーマンがいる。これが十和田で受けた印象ですね。
中央商店街(中央デパート)に山車小屋台を置き、街に滞在する、現代美術館の市民活動スペースを使わせていただき制作する…。まちと美術館を行ったり来たりする方法が十和田でのシャッターガイのスタイルなんじゃないかと考えました。
ただ、冬へ向かって冷え込んでいるいることや、もともと若い方達が街を歩く機会が少ないこともあり、平日などは街にほとんど歩いている方がいない。必然的に商店街のみなさんとお話することが多くなっていますね。
松本茶舗さんもそうですが、山車小屋台を展示している中央デパート(中央商店街)唯一のテナント山田さんのご主人とは、よくお話をさせていただいています。最盛期には14軒のお店があり、それぞれ活気にあふれていたそうです。
■ 千秋楽で優勝を決めた日馬富士の大一番を、店内のテレビで一緒に観てましたね。
坂口 そうですね。なんだか盛り上がっちゃいました。
■ 数々のアートプロジェクトに関わる作家さんとして、まちとの関わり方を強く求められることについてプレッシャーを感じたことはありませんか。
坂口 僕はあまりプレッシャーに感じませんね。求められている街との関わりを、そのまま正面から受けることはしません。自然体です。
■ 山車小屋台を制作する際のこだわりはどこに置いていますか。
坂口 廃材をどう魅力的に見えるのかを考えながら、同時に構造体としての強度を考えながら制作しています。主に結束バンドを使って固定しています。
集まった廃材(High-財)自体を「廃材のまま」使いたい。奥にいくにつれて見えなくなるまで重ねるのではなく、フレーム上、柱だけで組んだ上にひとつひとつが見えるよう配しています。その廃材(High-財)が何かわかるように。
現代美術館と中央デパートを行ったり来たりするモバイル的な山車小屋台は、徐々に高くなりつつありあります。最終日には三階層になりました。
■ 一階部分には大黒様や恵比寿さま、二階部分には使いこまれた洗車ブラシ、三階部分には強風で折れた傘…。集まりましたね。
坂口 商店街で話をさせていただくと、お店の奥まで案内してくださったり、実はこんなものがあると出してくださったり。また路上で見つけた面白いものも加えてあります。
■ 車のホイールもあったり、これが十和田で作られたものなんだと感動しますね。山車小屋台の制作以外、十和田ライフはいかがですか。
坂口 レジデンスに滞在しています。芸術祭のアーティストさんたちと呑んだり、芸術祭のお客さんとご飯を食べたり、松本柳太郎さんの還暦のお祝いライブに参加したり…。いろいろな方達との交流があって、ディープな話ができて楽しんでいます。
初日に十和田バラ焼きをいただきましたね。レジデンスの近くにあるスーパーで売っているべこっこコーヒーを切らさないようにしています。現金屋さんで地元澤目麺工場の生ラーメンを買って夜食にしたり、地元の食も味わいました。
いくつか温泉をまわりました。街から近いところにいくつか温泉があるのがよいですね。なかでもポニー温泉の泉質が気に入っています。オリーブオイルのようにぬるっとした肌触りですが、湯あがり後、さらっとしているのが気に入っています。
Interviewer : Terui